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新・南天通信

2007.10.31

共に生きるとは

共に生きる、共に働くとは、ただ単に居を一にする、仕事を一緒にするということではない。  互いに相手の人格を認め、自分との違いを含めたその人の「その人らしさ」を尊重し、同じ人間として水平な関係を保ちながら、助け合い支え合って生きる、働くということである。

 

私たちのNPOで、知的障碍のある人たちが暮らすグループホームを運営して23年になる。当初は1カ所だったが、現在は4カ所に増え、当然そのスタッフ(世話人)も増えた。各グループホームのサポート会議や全体研修時に「共に生きる」ことやNPOの理念などを繰り返し伝えているが、まだまだ充分な理解に至っていない。

 

このグループホームは「自立支援法」に基づくものなので、形の上では利用者とスタッフとに分けるのは仕方ないところである。しかし、実生活上は、彼ら彼女らがホームの主人公で、利用者なんていう消極的なものではなく、どんなに重い障碍があっても、自らの意思で主体的な暮らしを営む住人と位置づけられるべきだと考える。

ところがその住人さんに対するスタッフの向き合い方、話し方には、まだまだ?と首かしげる時が残る。例えば、とっくに成人を過ぎた住人さんに対してちゃん付けで呼んでみたり、子どもに対するような世話をしたり、また逆に出入りの支援者に「先生」と呼んでみたりなど、およそ"水平"な関係とは縁遠い場面がまだまだ残る。

 

たしかに、知的あるいは身体の障碍が故に、日常生活で出来ないところ、または出来にくいところが多くあるのは事実である。さらに重度の障碍のある人となると、いっそう自力での生活は難しい。  しかし出来ないことと、その人の人格は別である。仮に出来ないことが殆どであっても、その人の40年、50年の人生の積み上げにはかけがえのない価値がある。それは、その人にしかない中味であり尊厳である。

スタッフ一人一人がしっかり毎日を振り返り、住人一人一人を人として認め、それぞれのその人らしさを尊重するということになれば、互いの関係は水平となり、彼ら、彼女らの暮らしはいっそう豊になるであろう。

 

スタッフが住人さんの出来ないところや出来にくいところを、本人のつもりやおもいの確認のもと、必要に応じ、さりげない支援を続ければ、彼ら、彼女らの生活意欲はさらに高まり、法の理念のとおり「自立」、つまり自分らしく暮らすことへ大きく近づくことは間違いない。

私たちの目標は、目の前の障碍のある人やおとしよりを支えるだけでなく、助け合い、支え合いながら、共に生きる地域や社会をつくるということである。

こう言うと、また堅いことを言ってるとか、支援の日常はそんなきれいごとではないという声が聞こえてきそうだが、支援のための基本的な考え方として受け止めていただきたい。

 

蛇足ながら付け加えると、私はたしかに障碍のある人たちと36年間向き合ってきた。しかし本当に彼ら、彼女らと"水平"で"共に"の関係であった日は数えるほどでしかない。みなさんより先に、ずいぶん多くの間違いを犯し、失敗を重ねてきた。

スタッフのみなさんに対するこの提起は、彼ら、彼女らに申し訳ない!との私の反省の中味そのものである。 どうか私の二の轍を踏んでもらわないためにも、この提起を素直に受け止め支援を続けていただきたい。

 

 

 

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